<Header>
<Author: 杜甫>
<Title: 麗人行>
<Format: 格式不明>
<Year: 1988>
<BookName: 唐詩三百首詳解  上卷>
<Translator: 田部井文雄>
<style: 現代文無假名>
<style2: 日本現代譯文無假名標注>
<TranslatedTitle: 麗人行>
<BookPage: 331>
<UsedPage: 1>
<Feature: 0>
<End Header>
<Poem>
三月三日天氣新，
長安水邊多麗人。
態濃意遠淑且真，
肌理細膩骨肉勻。
繡羅衣裳照暮春，
蹙金孔雀銀麒麟。
頭上何所有，
翠微㔩葉垂鬢脣。
背後何所見，
珠壓腰衱穩稱身。
就中雲幕椒房親，
賜名大國虢與秦。
紫駝之峰出翠釜，
水精之盤行素鱗。
犀箸厭飫久未下，
鑾刀縷切空紛綸。
黃門飛鞚不動塵，
御廚絡繹送八珍。
簫鼓哀吟感鬼神，
賓從雜遝實要津。
後來鞍馬何逡巡，
當軒下馬入錦茵。
楊花雪落覆白蘋，
青鳥飛去銜紅巾。
炙手可熱勢絕倫，
慎莫近前丞相嗔。
<End Poem>
<Translation>
三月三日上巳の節句、空はすっきりと澄みわたって、長安の曲江の水辺には、
多くの美女が遊んでいる。その姿態は濃艶で、その気品は奥ゆかしくてしとやかで、自然の美しさがあり、はだのきめはこまかくて、うるおいがあってなめらかで、骨肉の均斉がとれた姿である。刺補をした美しいうすぎぬの衣裳は、晩春の光の中で照り映えており、その衣袋の刺細は黄金のより糸でくじゃくの模械、銀の糸できりんの模様を施したもの。頭にいただくのは何かといえば、翡翠の宝石を水の薬の形にした髪飾りで、びんの毛のあたりに垂れさがっている。うしろ姿に見えるのは何かといえば、真珠が、スカートの帯にずっしりと重くつけられ、ほどよく身体に調和している。

中でも、雲のように長く張りめぐらしたまんまくの中の皇后楊貴妃の親戚は、大国の虢国と秦国の称号を賜っているその夫人たちこそ、めざましい。その前には赤くり毛のらくだのこぶが、みどりのかまから取り出され、水晶の大皿には、銀白色のうろこの魚が並べられる。しかし食べ飽きていて、犀の角のはしは、しばらくの間ごちそうにつけられることもなく、鈴のついた包丁は、肉などを糸のように細かく切りきざむが、それもむだにあわただしいばかり。そこに天子の使者後宮の宦官が、巧みに馬を走らせて土ぼこりも立てずにやってくると、それに続いて天子の台所から、つぎつぎと八種の珍味が送られてくる。
笛と太鼓は悲哀の音色で、鬼神をも感動させるようであり、お供の者たちは混雑して、要路の津ともいうべき、この楊氏の一門にあふれている。

そこにくらを置いた馬にまたがって後からやって来た人、それはなんと、ゆっくりと馬を進めることか。まんまくを張りめぐらしたきわで、馬から下りてもうせんの敷物の中に入って行く。柳の綿が雪のように舞い落ちて白い花の水草をおおい、恋の使者とされる青い鳥が飛んでいって、赤いスカーフを口にくわえているといたありさま。その権勢は並ぶものなく、手をかざせばやけどするであろうと思われるほど。つつしんで、近づき進まないほうがよい、丞相楊国忠ににらまれよう。
<End Translation>